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何を言ってるんだあの人は!! スザクは仮面の下でダラダラと脂汗を流していた。 駄目だろう、悪逆皇帝が人気者の副会長だった話ししたら!そのへんは上手くルルーシュが調整して、どうにかぼかしていた内容だ。そもそも生徒会メンバー以外はシャルル皇帝が用意した偽りの教師と同級生たちだったし、元同級生たちもシャルル皇帝の記憶改竄でルルーシュに関する事を忘れていたから、うまく誤魔化せてたんだ。 それを、さも当たり前のように電波に流すなんて! 「お兄様のお料理、本当に美味しかったんですよ。サヨコさんがいらっしゃらない日は、いつもお兄様が料理を作ってくださって」 何故かこの言葉は、ざわめいていた会議室の中でもよく聞こえた。 だから、多くの代表たちは、本当なのか!?とこちらを見た。 ナナリー代表はルルーシュ皇帝の妹だ。 彼女の発言なら、間違いない。 ざわめきは、ますます大きくなった。 「ナナリー!代表!」 君まで何言ってるの!! 彼の料理上手は知っている。 何度も料理を御馳走になったし、時々和食も用意してくれて・・・そこまで考えたら、お腹がなりそうになったので腹筋に力を入れて無理やり押し殺した。 「まあ、ルルーシュ様は殿方ですのに料理お上手だったなんて。私もぜひご相伴に預かりたかったですわ」 カグヤは心底ざんねそうに言った。 いやいやいや、そういう問題じゃないだろう。 ルルーシュが何を行ったのか、気づいたんじゃないのか?何でこんな、せっかくの平和を壊すようなことを平然と口にするんだ! ギリギリと喰いしばった歯が音を立てる。 だめだ、このままでは終わってしまう。 ルルーシュの命を生贄にし築いた平和がなくなってしまう。 どうすればいい、俺はどうしたらいいんだ、ルルーシュ。 *** 「失礼いたしました。この映像は、ルルーシュ皇帝が料理好きだったという話のために流したものではありません。注目していただきたいのはこちらの女性、C.C.です」 あまりにも衝撃的な内容だったから忘れていたが、彼女がここにいることもまた問題なのだと、みなは気づいた。 「覚えていますか?彼女はゼロの、ゼロだけの協力者でした。彼女が黒の騎士団内で最後に目撃されたのは、ゼロが死んだとされる日でした。それ以降彼女はルルーシュ皇帝とともにいたのです。こちらをご覧ください」 そう言って映し出されたのは、海上に浮かぶ脱出ポットにいるC.C.だった。 「この写真は、皇議長から提供された資料になります。あのダモクレス戦で撃墜されたC.C.の姿です。そう、彼女はあの日もルルーシュ皇帝とともに戦場にいたのです」 「ゼロの死が、黒の騎士団で正式に発表されたということは、彼女は初代ゼロの死後、ルルーシュ皇帝のもとへ向かったと言う事ですね。では、蜃気楼が奪われたというのは、彼女が奪ったということではありませんか?」 惜しいなと、ミレイは思った。 これだけではまだ情報が足りないらしい。 ならば。 「こちらの画面をご覧ください」 ミレイは質問に応えること無く、笑顔でモニターを指し示した。 そこには、ナイトオブセブンだった頃の枢木スザクが映っていた。 その傍に、ブリタニアの紋章を背負った、黒いマントの人物の背中が映っていた。 「シャルル陛下の騎士、ナイトオブセブンだった頃の枢木卿でしょうか」 「はい、ブラックリベリオン後、ゼロが再び姿を現す前の枢木卿です。先程、黒の騎士団がゼロの死亡を発表したという話がありましたが、ゼロはその前にも一度死亡が発表されたことを覚えていますか?」 「ブラックリベリオンで枢木卿の手で囚われ、処刑されたという話ですね」 「はい。あの時も、ゼロは死亡したとされました。ブリタニアによる正式発表です。では、ブラックリベリオンの前と、後のゼロは別人だったと思いますか?」 「ブリタニアの正式発表ですから、最初のゼロは処刑され、ブラックリベリオン後は新たなゼロ、二代目だったと考えるべきかと思われますが」 「ブラックリベリオンの前、そして後のゼロ。そして今のゼロ。もし死亡しているなら3人ゼロがいたことになりますが、果たしてそうだったのでしょうか」 ミレイの問いかけに、どちらも信頼できる機関からの正式な発表だから何を疑っているのだろうと眉を寄せた。 テロリストを捉えた側のブリタニアも、ゼロを指導者としていた黒の騎士団も、死を偽装する理由がない。もし、同一人物だったとしたなら、それは死者が蘇ったということになってしまう。そんなことはありえない。 「枢木卿とともにいる人物は、ブリタニアの軍師で、ジュリアス・キングスレイです。ですが、ナナリー代表から手に入れた情報では、このような人物は存在しません」 「存在しない?ですが、いまそこに」 「正確には、この画像が撮影された頃にだけ存在した人物なのです」 「それは一体・・・?」 存在していなかったということは、偽名か? だが、なぜこんな話を? 「・・・さて、私は先程から皆さんが知らなかった情報を幾つも提示しました。ゼロの剣、蜃気楼、C.C.、そして、枢木スザク。皆さん気づいていましたか?先程の皇帝とC.C.のやり取りを。悪逆皇帝とし、あのような演説を始めたのはいつからでしたか?あれはアッシュフォード会談前までの、賢帝と呼ばれていたルルーシュ皇帝の発言でしたか?いえ、違います。あの映像は、世界征服を終えたあとの、映像です。そしてナイトオブゼロの日記、その最後の日の2枚めの文章を思い出してください」 ミレイの言葉に合わせるように、モニターにはゼロと皇帝の手にある剣、蜃気楼、C.C.、そして日記が映し出された。 「・・・ダモクレス戦のあとに、枢木卿が死んだ後に書かれた日記・・・?先程の映像でも枢木卿の名前が・・・これは一体!?」 あの日間違いなくスザクは死んだと、皇帝ルルーシュは発表した。 だから彼の墓も作られたのだ。 だが、この2つの情報は、どちらもダモクレス戦後に枢木スザクが生きていたことを示している。なぜ、死を偽装したのか。主人であるルルーシュが死んだ後もなぜ、姿を隠しているのか。 「私は、彼がこんな凡ミスするとは、どうしても思えないのです。このような危険な情報、危険な類似部分、彼ならすべて確実に排除しているはずです。確かに彼はドジっ子な面がありましたが、これは違うと思うのです。もしかしたら、これらは全て彼が出した無意識のSOSだったんじゃないかと、考えてしまうのです。今から行うすべてのことに気づき、止めてほしいと、彼は彼を知る人達に助けを求めていたのではないでしょうか」 ミレイの言葉の意味がわからず、周りは水を打ったような静寂となった。 「覚えていますか?アッシュフォード会談で、皇議長にルルーシュ皇帝が言った言葉を。世界を統べるのに必要なのは、自分を壊す覚悟だと、彼は言ったのです。自分を壊す、とは一体何を示していたのでしょうか」 自分を壊す。 その言葉を理解した時、剣に貫かれ血に染まったルルーシュの姿が脳裏をよぎった。 「では、お聞きください。ジュリアス・キングスレイと名乗っていた頃の、彼の言葉です」 |